待遇改善で求人難は解決する? 業界の問題があるとすればアレ・・

「美容業界を変えたい」と熱く語るサロンオーナーにしばしば出会うことがあります。共通しているのは低賃金・長時間労働の改善を掲げている点。週休二日や定時退社、できれば社保完備。この風潮は時代の流れにも沿っており、今後ますます加速していくように思います。では、実際にそうなっていくのでしょうか?

待遇改善にはお金が必要

長時間労働の改善や週休二日を実現するには資金が必要です。お店が儲かっていないと実現は難しいでしょう。いや、実現は可能ですがその分給与を下げなければならず、低賃金をとるか長時間労働をとるかの二者択一となってしまいます。両者の実現を行うには、まずはお店が儲かること。その上で社保完備が視野に入ってきます。これは美容室などのサロン業務にかかわらず、製造業や小売業などあらゆる業種に共通します。

まずは儲かること、このハードルが高止まりしている事が低賃金・長時間労働が改善しにくい原因と言えます。

では、なぜ美容業界は特に低賃金・長時間労働の傾向が強いのでしょうか?

低賃金・長時間労働は美容業界だけの問題か?

美容師・美容院が低賃金・長時間労働と言われやすいのは、一言でいえばサービス業だから。実際には美容業界だけでなく、飲食業界も全く同じ状況ですし、美容に近い写真館などや、アパレルをはじめとする物販なども同様だと言えます。業界体質と言えばそれまでですが、近年においては低価格化や、顧客の要求水準の上昇が追い討ちをかけており、まずます儲かりにくい環境が整っています。

そんな中、美容業界に他と異なる特殊なところがあるとすれば、接客において美容師免許が必要という点が挙げられます。飲食店であれば調理師以外(ホールや仕込みスタッフ)は免許は不要ですが、美容院・ヘアサロンにおいては顧客に触ってはいけない(ことになっている)ため、簡単に人を増やす事ができません。これが長時間労働・低賃金と重なる事で極度の人材不足という修羅場につながっていきます。

では、これらの状況を改善する余地はあるのでしょうか?

儲かれば改善できる

当たり前ですが、全ての大元は儲かる事。儲かることによってあらゆる点がうまく行きます。昔のオーナーらは儲かったら儲かった分を自分が取り、ポルシェに乗ったり家を立てたりという事が多かったとされます(美容師=先生、という時代:今もまだ生き残っています)。それを見て、「自分もああなりたい」と思う人と、「いや、ああはなりたくない、部下に還元したい」と考える人がおり、後者が増えてきたのが今の時代だと言えます。が、ああなりたくない、以前にお店そのものが儲からない時代に入ってしまった点が困難の大元。これは誰が悪いというわけではなく、強いて言えば長く続いたデフレ、さらに突き詰めると90年代の日銀の政策ミス、とでも言えるのかもしれませんが・・。

結局は、この時代の間に「低価格至上主義」という価値観が育ち、そんな時代が続きすぎたためにそれが国民に定着してしまったという事。これが厄介なのは、低価格が求められる一方で、サービスへの要求水準は高まり続けてきたところ。90年代末にスタンダードだった日本の接客(世界最高水準)は、現代の日本ではとても通用せず(実際には通用するが一部で不満をぶちまける人がいる)、言葉も態度もやたらと高度なものを求められる時代。にも関わらず単価は上がらないために、「儲かれば改善できる」というシンプルな理屈の実現がとても難しくなっていると言えます。

時代以外に原因があるとすればアレ

サービス業が儲かりにくくなってしまった現代の日本。時代の流れという側面もありますが、その中でわかりやすい象徴のようなものもあります。ホットペッパーさん。リクルートは頭脳集団で、優秀な人材を輩出しながらトータルで経済界への貢献度は高いのは間違いないように思います。そんな組織が運営するホットペッパーやホットペッパービューティは、結果的には業界従事者の幸せには貢献していなさそうに見えます。

ホットペッパーをやると顧客が大量に来る、というのは事実で、(昨今はまた違う傾向になっているかもしれませんが)ともあれ一時的にはプラスであると捉えられます。が、そのサービス全体がクーポン至上主義の顧客を量産・育成している側面は強く、また顧客が固定客化しづらいという指摘もしばしば耳にします。結果、実態としてはリクルートさんの顧客をシェアさせてもらっているだけ、という仕組みがガッチリ出来上がってしまっているようです。よく「一度始めたらやめられない。麻薬のようなもの」と評されますが、客観的に見てさらに問題なのは、原価計算がしづらくなる点ではないかと考えています。

一つの売り上げをあげるのにいくらかかったのかは重要で、それは看板だったりチラシだったり、フリーペーパーやポスティング、近年であればWeb広告やSNS広告など。それにかかった費用や接客対応した人件費、リピートにつなげるための営業努力・販促費 etc.. これらの原価や努力の大小が、すべてホットペッパー掲載費用40万円/月(※一例です)にのみこまれ、何に対してどれだけの費用と労力がかかったのかが見えにくくなくなります。財務に詳しい人間が経営サイドにいればいいのですが、職人社会にそういった人材が多いはずはなく、なかなか苦しいところではないかと感じています。これは飲食店も同様です。

例えばホットペッパーの広告費月額40万円をスタッフの待遇改善に投資すれば、長期的にはお店は儲かり、低賃金・長時間労働の改善につながる例も出て来るかもしれません。ここでいう「儲かる」とは、売上ではなく利益率のことで、重要なのは総売上ではなく経常利益であるのはいうまでもありません。(前者が大きければ銀行は喜びますが・・)

ホットペッパーありきの独立

ホットペッパーでガンガン集客している店で修行をしてきたのが原因なのか、ホットペッパーありきで独立したケースをいくつか見てきました。そのお店が成功するかどうかはわかりませんが、業界にとってはマイナスのように思えます。人口が増えないのにお店が増えればパイの奪い合いになるからです。本来であれば独立できるポジションではなかった人まで独立し、しかもホットペッパーがあるのでなんとなく集客できてそれなりに何年かはお店が続いていく時代。独立しやすい時代といえば人材流動性の観点からすれば良い事のように見えますが、低賃金・長時間労働の是正という観点では「皆で痛み分け」が加速しているとも評せます。

ここまで書くと、いかにもホットペッパーが悪であるかのように聞こえますが、実際に彼らが業界からの搾取を狙ってそうしたとは考えづらく、ただひたすらサービスをブラッシュアップしていったらこうなった、というのが本当ではないかと思います。あくまで推測でしかありませんが。

そのホットペッパー自体も、人口1.2億程度の日本のパイではそろそろ行き詰まりが来る頃で、ゲームチェンジのための次の一手を考えているのではないでしょうか? 実際はどうあれ、そういった大波にあらがいながら「待遇改善」を実現していくには、サロン関係者もいろんな手法を学び、知恵をつけ、様々な武装で対応していくしかないのかもしれません。

ともあれ、実際に「待遇改善」を着実に進めているお店さんをちらほら見聞きするので、それらがモデルになって長期的には人材不足も解消していくのではないかと思います。

以下、→ 美容師求人の一覧